歯周病の治療

歯周病は、歯を支える骨が溶ける病気です。ブラッシングが不十分で歯の表面に歯垢や歯石が付着して歯周病のばい菌が増えると、ばい菌が強い毒素を出して歯ぐきが炎症を起こし、炎症によって歯ぐきの中の骨が少しずつ破壊されてしまうというのが歯周病のメカニズムです。

実は、歯周病の軽度なものから重度なものまで全てを含めると、30~50歳代の約8割、60歳代の約9割が歯周病にかかっているといわれています。原因として、

①歯周病菌はお口の中の常在菌であり完全にゼロにすることは難しい
②歯科医院でブラッシング指導を受けて適切なブラッシングができる人が少ない
③定期的に歯石取りをして歯周病の予防をしている人がまだまだ少ない
④年齢が上がるにつれて身体の免疫力が低下して歯周病にかかりやすくなる
⑤痛みなどの自覚症状が出にくいため、自分では気が付かない間に進行してしまう

ということが考えられます。

一度歯周病によって破壊された骨は、残念ながら元に戻ることはありません。歯周病にかかってしまった場合は、歯科医院での専門的な治療を受けて歯周病の進行を防ぐことが必要になります。

以下に、歯周病の進行度合いに応じた歯周病の治療を説明していきます。

①P1(軽度の歯周病)

歯周病の初期段階で、歯の表面に歯垢や歯石が溜まり、歯ぐきが軽度の炎症を起こして赤く腫れている状態です。この段階では、歯を支える骨の破壊も軽度なレベルなので、痛みなどの症状はほとんどありません。したがって、自分自身ではなかなか気が付きにくいので、なるべく歯科医院でチェックしてもらいましょう。

P1の治療法は、ブラッシング指導スケーリング(通常の歯石取り)です。

ブラッシング指導は、歯ブラシでの磨き方だけではなく、歯ブラシの選び方、フロスや歯間ブラシなどの補助清掃器具の選び方・使い方、習慣的飲食物やお口に関わる生活習慣に関する指導など、患者様がご自分で歯を守るためにできることを総合的に指導させていただきます。

スケーリング(通常の歯石取り)は、超音波スケーラーや手用のスケーラー(歯石を取るためのとがった器具)を用いて、歯の表面についている歯石(図の歯石の部分)を除去します。歯石の量が多かったり歯の厚みが薄い方は、スケーリングをした後に一時的に冷たいものがしみることがありますが、だんだんおさまります。

スケーリングも重要ですが、実は一番重要なのはブラッシング指導です。いくら歯科医院できれいに歯石をとっても、毎日の患者様ご自身のブラッシングが不十分であった場合は歯周病が進行してしまうからです。スケーリングを行って歯をキレイな状態にして、さらにご自分で適切なブラッシングをしてもらうことで、歯周病の進行をくい止めることができます。

②P2(中等度の歯周病)

歯周病が進行し、歯の表面だけでなく歯の根っこにまで歯石が溜まり、歯ぐきが中等度の炎症を起こして赤く腫れている状態です。この段階になると、歯周病特有の口臭(膿んでいるようなにおい)がするようになります。また、歯を支える骨の破壊もある程度進行し、歯が少しずつ揺れてきます。ただし、痛みはほとんどなく、口臭も自分では分かりにくいため、発見が遅れることが多いです。

P2の治療法は、ブラッシング指導SRP(高度な歯石取り)です。

ブラッシング指導は、P1の治療法に述べたものと同じです。

SRP(高度な歯石取り)とは、超音波スケーラーや手用のスケーラー(歯石を取るためのとがった器具)を用いて、歯の根っこについている歯石を除去する治療です。P1の治療のスケーリング(通常の歯石取り)と何が違うかというと、SRPは歯ぐきの中の深いところの歯石を取るため、術前に麻酔が必要になります。また、歯の表面についている歯石と、歯の根っこについている歯石は成分が全く異なっていて、後者の方が硬い成分で強固にこびりついており、しかも直視もできない歯石のため、除去するには高度な技術が必要になります

つまり、SRP(高度な歯石取り)はスケーリング(通常の歯石取り)よりも難しい治療なので、治療時間と治療回数がかかります

③P3(重度の歯周病)

P2からさらに歯周病が進行し、歯を支える骨の半分以上が炎症により破壊され、歯ぐきも重度の炎症を起こして強く腫れている状態です。この段階になると、歯周病特有の口臭(膿んでいるようなにおい)がさらに強くなり、歯が大きく揺れて痛みも出始め、強く噛めなくなります。この段階まで歯周病が進行してしまうと、歯の寿命は長くありません。歯周病の自覚症状が出てから、歯科医院に来院された時にはすでにP3になっており、手遅れになっていることも少なくありません。なるべくこの段階になる前に、歯科医院で検診や治療を受けるようにしましょう。

P3の治療法は、少しでも寿命を延ばすための歯ぐきの外科治療を行い延命治療を行うか、消炎処置を行い経過観察を行います。また、歯ぐきに急激な炎症が起きて引かなかったり、レントゲン写真にて歯を支える骨の破壊がどんどん広範囲に広がる状態であれば、周りの歯を守るために抜歯の治療が必要になります。